2018 第8節 町田ゼルビア vs ロアッソ熊本 プレビュー2 ~分析~
J2第8節。町田ゼルビア×ロアッソ熊本のプレビューの続きです。今回はロアッソの戦術についてざっくりと分析したいと思います。
ロアッソの分析については、素晴らしい分析で有名ならいかーるとさん (らいかーると (@qwertyuiiopasd) | Twitter)が既に徳島ヴォルティス視点での分析をしていて、ロアッソがどの様なチームなのか書いていますのでご覧ください。
ロアッソ熊本対徳島ヴォルティス ~配置的な優位性と似て非なるタスクチェンジ~ - サッカーの面白い戦術分析を心がけます
簡単に言うとロアッソは、
- 相手SBの対応の問題でFWに裏を狙われる
- しかし守備は粘り強い
- 米原からの攻撃と田中の突破力に注意
- 安と皆川のカウンターのためのポジショニングがエグい
などの特徴があり、突破力や空中戦で優位に立てない相手は苦戦を強いられます。
(お知らせ)ロアッソ×ヴォルティスのハイライトはこちらで。その他の試合ハイライトも簡単に見れるので分析などにご利用ください。
ロアッソはJ2が魔境であることを教えるチームへと変貌しました。一方のゼルビアは魔境でも異色を放つ変態チーム。ドラクエで例えるとするならばマホトーンと痛恨の一撃でプレイヤーを苦しめる、つまり
あばれザル+キャットフライ!
…話が逸れましたがゼルビアにとって苦手な相手であろうロアッソに勝つことが出来るのか簡単にですが分析したいと思います。
第8節はこんな記事も書いています。良かったらご覧ください。
守備
前線のプレッシング
前線のプレッシングのスイッチの入れ方は大きく2つあると思います。1つはロアッソのWBがハーフウェイライン付近まで飛び出してプレスを仕掛けるやり方です。これがスイッチとなり相手がボールを後ろに戻すとFWが追従してプレッシングをしかけ、全体的に押し上がる組織的な守備です。プレッシングの目的はボール奪取もしくは精度の低いロングパスを出させて、DFラインで空中戦に勝ち高い位置で反撃するのが狙いです。
もう1つは敵の組み立てに対しての超攻撃的なプレッシングです。主にロアッソの攻撃が終わり相手GKがDFにパスをした時に見られ、FWが高い位置でプレスを仕掛けます。
状況によっては第1プレッシャーラインが30m辺りと非常に高く、掻い潜っても中盤+CB1人がセンターサークルより前でゾーンを形成します。当然目的はショートカウンター狙いですが、相手の攻撃を封じると言うのもあります。2つ目の画像の赤丸は右CB小谷です。この様にボールサイドのCBが非常に高い位置まで上がります。
ロアッソのプレッシングは配置や連動性に発展の余地があるものの積極的です。ゼルビアからすれば中途半端なボール保持は危険で、組織的に掻い潜ることが求められます。
自陣でのブロック守備
ロアッソは自陣で5-3-2の守備ブロックを形成します。そして相手がサイドでボールを保持した時に前線での守備と同様にWBが飛び出し、他の守備陣がスライドして4-4-2の様な布陣へ変わります。WBのプレスに相手が後退すると上述した前線からのプレッシングへと移行します。
この5-3-2ブロックの守り方は、らいかーるとさんが述べている通り相手がサイドで人数をかけて来た場合、誰がマークに付くのかと言う問題が発生します。
赤枠はドリブル後に1手で得られる可能性が高いスペース
3バックが相手ならサイドのCBが、4バックならSBがボールを持てるスペースが空きます。基本的にはOHの選手がマークに詰めますが、ゾーンを飛び出すとそこから1枚ずつマークを剥がされるので、積極的なマークが出来ません。ゼルビアからすればSBの攻め上がりがとても重要になります。そして中盤の選手のサポートが大切になってきます。
ここで優位になれば相手を引き出してFWが裏を狙うことも可能となるため、ロアッソのプレッシャーに負けずにボールをキープできるか注目してみましょう。もしかしたらロアッソは最初から4-4-2かもしれませんね。
守から攻の切り替え(ポジティブトランジション)
敵陣でボール奪取時
敵陣でボールを奪取したらカウンターに備えたFWを意識したショートカウンターを行います。WB田中は好調でスピードとクロス精度も高く危険な選手です。
他にはボールサイド、逆サイドを意識した攻めも行います。アルビレックス戦ではOH八久保が外へドリブルし、WB黒木が中に走りヒールパスを受け取りシュートまで運ぶと言った、トレーニングしているであろうパターンが見られました。
ゼルビアが自陣でパスミスしてしてしまったら逆サイドを突かれて即失点となるので是が非でも避けたいです。
自陣でボール奪取時
ロアッソはカウンターに長けたチームです。基本的にFWやWB田中へ縦パスを出します。特にFW2人は良い位置でボールをもらう動きをしていてマークがしづらい様です。ゼルビアのコンパクトサッカーで動きを制限できるか注目しましょう。
しかしロアッソのポジトラのパターンは素早い展開だけではありません。
アルビレックス戦の2点目のシーンですがこのハイライトの前の場面で、ボール奪取後にCB園田が中央レーンに移りパスを受けドリブルで新潟の第1プレッシャーラインまで進みつつ全体が押し上がる中、右CB小谷へ展開します。そして新潟がスライド対応する前に大外の裏を狙い縦パスを出して田中を走らせて素晴らしいクロスが入り安がゴールを決めます。
同じくアルビレックス戦の3点目のシーン。CH米原が相手のプレッシャーを掻い潜り小谷へ展開して再び田中を大外のスペースへ走らせます。相手と数的に同数な状況で素晴らしいクロスが入り八久保がゴールを決めました。
ミドルサードでポゼッションして相手を引き付けて右CB小谷に渡して田中のスピードを活かす攻撃が非常に厄介です。CH米原は相手を交わしたりパスを出すのが上手いです。
ゼルビアが敵陣でボールをロストした時に、守備への切り替えが遅れた選手が出ると簡単にゴールまで運ばれてしまいます。ゼルビアのネガトラ局面は非常に重要で、ロアッソの反撃の出だしを防ぐことが勝敗を左右するポイントだと思います。
またゼルビアが最も苦手とするロングボールでのサイドチェンジですが、ロアッソはあまりしてこない印象です。いずれにせよパスの出し手を潰すことが大切です。
攻撃
自陣からのビルドアップ
ロアッソのビルドアップは上手いとは言えませんが狙いは自陣でのポジトラと同じで、DFラインでボールを回し縦パスの機を伺いながらCHとパス交換します。OHの中山がCHの位置に下りるのが特徴です。
CH米原からFWへとパスが通るとギアチェンジして攻め上がります。そしてWBを大外のスペースへ走らせてクロスまで展開させます。
若干20歳ですが1ボランチを任されている米原は今年ブレイクする予感があります。しかしゼルビアは敢えて米原をターゲットとするべきです。シャビやブスケツの様にコンパクトでプレッシャーの激しい中でプレー出来るのか、奪ってショートカウンターに持ち込めるのか、真っ向勝負です。
敵陣での組織的な攻撃
敵陣での攻撃では中盤の3人に気をつけたいです。八久保はシャドーストライカー、中山はボランチの位置に移り3-4-3の様な形になるので、ゼルビアはマークの受け渡しを気をつけたいです。そして何度も言ってますが米原からの攻撃は注意が必要です。
アルビレックス戦の先制点のシーン。ミドルサードで米原がフリーになりドリブル侵入し、中央を破る綺麗なスルーパスを出します。それを見事な動き出しをした安が裏に抜けてペナルティエリア外からゴールします。
ゼルビアに疲れが見え始めた際の米原のフリーになる動きを防ぎたいです。杉森やドリアンを投入して、こちらの攻撃でその様なタスクを封じ込めたいです。
攻から守への切り替え(ネガティブトランジション)
即時に奪いに行くパターン
ロアッソの攻撃パターンは主にDFでボールを回して縦パスでFWやWBの優位性を活かすやり方です。その時の陣形は3-2-3-2や3-4-3の様になります。ボールサイドのCBも前がかりになります。
相手の守備がロアッソの縦パスを跳ね返したときに、ボールロストに備えた予防の守備として、そのゾーンを守る中盤もしくは前がかりのCBがプレスを仕掛け、そのプレスが有効と判断したら他の選手が連動してコンパクトになりボールを奪い返しに来ます。
安はカウンターに備えて前線で優位となる位置を探すので、攻→守の切り替えは遅れがちです。ゼルビアが自陣でボールを奪ったら安がいるサイドから攻めると前に運べる回数が増えると思います。
リトリートするパターン
ロアッソのFWを走らせる攻撃でMF陣の押し上げが間に合っていない状態でボールロストすると後退する傾向があります。というのもその状況はプレッシャーが掛からないので相手に逆サイドへボールを運ばれて、縦パスなど出されるため、ロアッソの中盤はそれに備えてスライドしつつ後退します。
ゴールキック
攻撃時
DFにパスを出してポゼッションで組み立ててからロングパスを出そうとすることがあります。しかし余りポゼッション自体は上手くありませんので狙い目です。
ロングボールを蹴る場合は4-3-1-2の様な形になる事があります。ターゲットは皆川です。皆川が競り負けてセカンドボールを相手に取られても後ろを固めて縦パスを入れさせない様な陣形です。
ゼルビアはハイタワー2トップに空中戦で勝つ事が出来るのか気になるポイントです。
守備時
5-3-2のブロックを形成します。中盤に空中戦を競らせてDFは裏を取られないように全員後退する動きを行います。ボールを回収したら自陣での組み立てを行います。
スローイン
スローインはスローワーにパスを戻して後方に下げてからアーリークロスを安に送るパターンがありました。ヴォルティス戦でもスローインから得点を決めているので気をつけたいところです。
CK・FK
攻撃時
高い選手を揃えつつ、ショートコーナーも積極的に活用します。キッカーは八久保で、中には基本的に5人で、米原(184㎝)、安(183㎝)、皆川(186㎝)、園田(180㎝)、青木(183㎝)などです。青木は密集部隊ですがセカンドボール回収のための位置取りを良くします。ニアサイドにショートコーナー役も兼ねる中山を配置し、ペナルティエリア外にもショートコーナー役の田中が配置されています。
ショートコーナーを使わずとも皆川の高さは脅威です。
アルディージャ戦より。皆川がニアサイドに走り込みゴールを決めます。ロアッソは控えにも巻や植田など高さのある選手がいるので、単純な空中戦も気を付けなければなりません。
守備時
CKの守備はニアにストーンを2人配置したマンマークが基本の様です。ショートコーナーも警戒した守り方です。
栃木SCが決めたゴールの様にニアサイドのボールをフリックして軌道を変えるパターンは有効みたいですね。このゲームも平戸のキック精度に注目したいですが、そもそも5バックのチームに対して多くのCK回数が得られるのか、そこまでサイド深くに攻め込めるのかに注目しましょう。
まとめ
- ロアッソのプレッシングを掻い潜ることが出来なければ得点の可能性は低い
- 勝負のカギはSB!中盤の質の高いサポートが必須
- 米原からボール絶対奪うマン!
- ネガトラをサボったら負けぢゃ
- ロングパスを簡単に出させない!
- ウチのセットプレー攻撃は少ないと思う
以上でロアッソ戦のプレビューは終了です。お互いの特徴を出し合うような、そしてプロフェッショナルで非常に熱いゲームを観ることができそうです。試合を楽しむも良し、美味しいスタジアムグルメを堪能するも良し。それぞれが楽しく感じるひと時を過ごせると良いですね。次はマッチレビューで⭐️それでは!